終身死亡保険には相続対策以外の目的で入るな

終身死亡保険には相続対策以外の目的で入るな

終身死亡保険を検討している、もしくは既に加入している方。

あなたが終身死亡保険に求めているものは何ですか?

「老後に生活費・医療費など様々な目的に使えるためのお金を用意したくて….」

「一生涯の保障が欲しくて…..」

このように考えている方は、残念ながら保険のセールスに乗せられて無駄に保険に加入している可能性があります。

タイトルの通り、終身死亡保険は相続対策には有効です。

しかし、それ以外の目的で入るべきではありません。

この記事では、その理由と具体的にどう終身死亡保険と向き合うべきかお伝えします。

終身死亡保険とは

終身死亡保険(単に、終身保険とも言う)がどのような商品か既に知っている人も多いとは思いますが、商品概要を簡単にみてみましょう。

主な特徴は以下です。

・被保険者が死亡した時に、保険金受取人が死亡保険金を受け取れる
・保障が一生涯続く
・終身払込タイプ(保険料を一生涯払い込む)と有期払込タイプ(保険料を一定期間まで払い込む)が存在する

・貯蓄機能があり、途中で解約した場合は契約期間に応じて解約返戻金が受け取れる


終身死亡保険 有期払い込みタイプのイメージ

相続対策以外ではおすすめしない理由

最初に申し上げた通り、終身死亡保険は相続対策に用いる以外にはおすすめできません。

理由は以下です。

・利回りが低く、資産運用に向かない
・死亡保障が定期死亡保険より用意しにくい

では、それぞれ見ていきましょう。

利回りが低く、資産運用には向かない

一つ目の理由は、現在の終身死亡保険は資産形成には向からないからです。

現在では、保険会社はみなさんから預かったお金を高い利回りで運用できないのです。

実際にとある生命保険会社Xの以下のような終身死亡保険について考えてみましょう。

生命保険会社Xの終身死亡保険の契約例
・契約年齢:30歳男性
・死亡・高度障害保険金額:1000万円
・保険期間:終身
・保険料払込期間:60歳まで
・保険料:26890円 / 月

この保険の解約返戻金は以下のようになっています。

50歳時点で576万900円(払込保険料総額は645万3600円)
60歳時点で893万9700円(払込保険料総額は968万400円、ここで保険料の払い込みは終了)
70歳時点で928万7500円(払込保険料総額は968万400円)
80歳時点で959万8500円(払込保険料総額は968万400円)

契約から50年後の80歳時点であっても、払込保険料総額よりも解約返戻金額が小さいことがわかります。当然、利回りはマイナスです。

もしかしたら、「死亡した場合は、死亡保険金1000万円がもらえるので、払込保険料総額よりも多い金額を受け取れるじゃないか」という人がいるかもしれません。

例えば、この保険に加入している方が75歳で死亡した場合、払込保険料総額が968万400円、死亡保険金が1000万円ですから、支払った保険料より31万9600円多い金額を受け取ることになります。

しかし、30歳からの45年でこの程度の増加は他の投資商品と比較してしまうと、決して喜べるものではありません。

お金を増やしたい方は、別の手段を考えるべきです。

定期死亡保険より死亡保障が用意しにくい

二つ目の理由は、定期死亡保険より死亡保障が用意しにくいことです。

同じ死亡保険金額を用意するのに必要な保険料が大きく異なるのです。

ですから、単に死亡保障が欲しいならば、定期死亡保険や収入保障保険に加入しましょう。

相続対策には有効

冒頭でも述べましたが、終身死亡保険は相続対策には有効です

なぜなら、死亡保険金には非課税枠があるからです。

死亡保険金は相続人(配偶者、子など)が受け取る場合に限り、

500万円×法定相続人の人数

の金額が非課税となります。

ただ、ここで注意したいことがあります。

それは、そもそも相続税には基礎控除があるので、相続する金額によっては死亡保険の非課税枠を使うまでもなく相続税はかからないということです。

2020年現在、相続税の基礎控除は以下の式で算出されます。

遺産に係る基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の数
※法定相続人とは、被相続人の財産を相続する権利がある人のことです。

これが、相続税の課税対象となる金額から控除されます。

たとえば、法定相続人が1人の場合、遺産に係る基礎控除は上記の計算式を用いて、

3000万円+600万円×1人=3600万円

となります。

ですから、亡くなった人の遺産が3600万円以下であれば、相続税は1円もかかりません。

基礎控除以上に財産がなければ、終身死亡保険でお金を残すことにメリットはありませんので、この点は注意しましょう。

加入方針

以上をふまえて、終身死亡保険にどのように向き合うべきか。

みなさんを以下のグループに分けます。

・終身死亡保険に加入していない方
・終身死亡保険に加入している方

では、それぞれ見ていきましょう!

終身死亡保険に加入していない方

相続対策をする必要がなければ検討しなくてよいです。

死亡保障が欲しいのであれば、定期死亡保険か収入保障保険に入りましょう。

もし、相続対策で終身死亡保険を利用するのであれば、通常の終身死亡保険ではなく、変額保険の終身タイプに加入することをおすすめします。
(ただし、変額保険を単にお金を増やそうとする目的で使用することは推奨していません)

さきほど述べたように、現在販売されている終身死亡保険は中途解約した場合の利回りはマイナスで、死亡した場合に受け取る死亡保険金も支払った保険料総額よりわずかに多い程度です

一方、変額保険の終身タイプは解約返戻金や死亡保険金は運用次第で変わるため(死亡保険金は最低保証金額がある)、ある時点までの利回りを計算することはできませんが、運用次第で返戻率が100%を大きく超える可能性があります。

ですから、ほとんどお金が増える見込みのない終身死亡保険よりは、増える可能性のある変額保険の終身タイプに加入する方が得策だと考えます

終身死亡保険に加入している方

相続対策以外で加入している場合、解約を検討します。

ただ、全ての方が解約したほうが良いわけではありません。

過去の終身死亡保険には利回りが高い保険もあるからです。

解約すべきかは、現在の解約返戻金、ある時点(20年、30年後など)の解約返戻金と現在からそれまでの期間から利回りを計算して判断します。

その利回りが他の投資商品と比較して、高い場合は継続しましょう。

利回りの計算方法については以下の記事を参考にしてください。


他の投資商品と比較して利回りが低い場合は、利回りの他に元本割れのリスク等を考慮して、解約および他の商品の購入を検討した方がよいと考えます。

まとめ

終身死亡保険は相続対策には有効です。

ただ、貯蓄のために今から終身死亡保険を利用するのは得策ではありません。

また、相続対策で終身死亡保険を検討する場合は、通常の終身死亡保険ではなく、変額保険の終身タイプを検討するのがよいでしょう。

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